大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

福岡高等裁判所 昭和59年(行コ)1号 判決 1984年5月30日

控訴人(原告) 城戸昌三

被控訴人(被告) 建設大臣

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  控訴の趣旨

1  原判決を取り消す。

2  被控訴人が昭和五七年一〇月二六日控訴人に対してした再審査請求を棄却する旨の裁決を取り消す。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  控訴の趣旨に対する答弁

主文と同旨

第二当事者の主張

次のとおり付加するほかは原判決の事実摘示と同一であるからこれを引用する。

一  控訴人の主張

1  原裁決をした福岡市建築審査会の構成上の瑕疵は、右審査会の委員の任命権者である福岡県知事を監督すべき被控訴人が、建築基準法七九条の解釈を誤り違法な監督権の行使をなした結果生じたものである。

よつて、本件裁決には固有の違法事由があるというべきである。

2  本件裁決は、控訴人が再審査請求をしてから一一か月を経過してなされており、このように著しく遅延した裁決は違法というべきである。

二  控訴人の右主張に対する被控訴人の答弁

右主張はいずれも争う。

理由

当裁判所も原審と同様、控訴人の本訴請求を失当として棄却すべきであると判断するもので、その理由は、左のとおり付加するほかは原判決の説示と同じであるからこれを引用する。

(一)  控訴人は、被控訴人が建築基準法七九条の解釈を誤り、福岡県知事に対する違法な監督権行使の結果、福岡市建築審査会の構成上の瑕疵を生じたものであるから、本件裁決には固有の違法事由がある旨主張する。

しかし、仮に、控訴人主張のような事実関係において、右審査会の委員の構成上何らかの瑕疵が認められるとしても、右はあくまで行政処分の主体に関する瑕疵として右審査会がなした原裁決の違法事由となり得るにとどまり、本件裁決の固有の違法事由とはなり得ないというべきであるから、控訴人の右主張は採用できない。

(二)  次に、控訴人は、本件裁決は著しく遅延してなされたから違法である旨主張する。

しかしながら、裁決が遅延した場合、行政庁が裁決をなすことを怠るという不作為(遅延)そのものが違法とされることはあるとしても(行政事件訴訟法三七条参照)、右遅延により裁決自体が違法となると解すべき根拠は見出せないから、控訴人のこの点の主張も理由がない。

よつて、原判決は相当であり、本件控訴は理由がないからこれを棄却することとし、控訴費用の負担につき民訴法九五条、八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 蓑田速夫 柴田和夫 宮良允通)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例